思い出事件録

相続放棄をあえてしない

2008.06.18

自分が相続人になったとき、相続する財産のうち、プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合は、「相続放棄」をすることができます。

たとえば、借金だけが残されたケースが典型的ですが、
不動産や預金もあるけれど、それ以上に借金もあるようなケースでも、相続放棄を検討することになります。

このようケースの場合、家庭裁判所に相続放棄の手続きをとれば、
自分は相続人ではなかったことになり、
プラスの財産もマイナスの財産も、相続しなくてよいことになるのです。

その場合、相続財産は、次順位の法定相続人に相続されることになるのですが、
この場合も、次順位の法定相続人は相続放棄の手続きをとることができます。

私たち法律家からすると、借金だけが残された場合は、
法律上の権利として、相続放棄の手続きをすすめるわけで、
また、相続放棄をするのは当たり前、とすら思っているのですが、
あえて相続放棄をしなかった女性がおられました。

父親についで母親が亡くなり、借金が残されました。
兄妹2人が第1順位の法定相続人のケースでしたが、
兄は、躊躇することなく相続を放棄しました。
私のクライアントである妹Aさんは、自分が相続放棄をした後のことを心配されました。

兄に続けてAさんも相続放棄をしてしまうと、
借金は、次順位の法定相続人である叔父叔母(母親の兄弟)に
相続されることになります。
叔父叔母は、すでに高齢で、交通の便の悪い地方にお住まいでした。
年老いた叔父叔母に、今さら借金を払わせることはできないし、
かといって、叔父叔母に相続放棄をしてもらうために、
わざわざ家庭裁判所まで出向いて相続放棄の手続きを
とらせるような事態に追い込むのはとても忍びない。
そうであれば、自分は、相続放棄をしないで何とか借金を払う・・・とおっしゃるのです。

けっして小さい金額ではないその借金を払うために、
Aさんは、こつこつためた貯金をはたくのでしょう・・・
ですが、Aさんは、「お金はまた働けばいいですから・・・」
と爽やかに言い切るのです。

Aさんの生き方を見たような気がしました。

法律問題の解決に導く過程において、
私たち法律家は、選択肢とそれぞれのメリデメを
クライアントにお伝えし協議します。
その上で、クライアントの判断が形成されていくのですが、
そこにいたる過程では、クライアントの人生観や価値観等が
大きく影響することになります。

弁護士、という仕事は、法律問題だけではなく、
その背後にあるクライアントの人生観や価値観、生き方に
ついても、たくさんのことを学ばせていただく仕事だなあ、と
感じる毎日です。

それにしても、私は、Aさんのような判断が出来るでしょうか・・・
そんなことを自問しては、Aさんの生き方がまぶしく思えてしまうのでした。
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  ~あなたの身近な法律アドバイザーとして~
    東京都 練馬区 石神井公園駅徒歩2分
   『相澤法律事務所』 弁護士 相澤愛
     http://www.aizawa-law.jp/
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