法律よもやま話

時給800円

2008.04.18

資力のない被告人は国選弁護制度を利用することができます。
これは憲法37条で保障されている権利です。

ところで、国選弁護制度に携わる弁護士の報酬はどのくらいかご存知でしょうか。
現在、地裁事件で平均的な自白事件の場合(接見回数3回、公判回数2回)、約7万3000円とされています。
この額は妥当と思われますか?

国選弁護士の業務としては、接見に行ったり裁判に出席するだけではなく、記録閲覧・謄写、記録の検討、証人打ち合わせ、示談交渉、尋問事項等の事前準備、弁論要旨の作成etc.で、少なくとも約13時間はかかるとされています。これを時給に換算すると5615円となり、この額では、事務所を経営していくだけの費用は賄えないとして、弁護士会としては、報酬増額を求めた意見書を提出しています(2007年8月23日日弁連意見書「国選弁護報酬改善の基本方針」)。

かつて私が担当した国選弁護事件を振り返ると・・・。

否認事件であったこともあり、接見回数は数十回、深夜に及ぶ複数回の現場検証に加え、数十頁に及ぶ弁論要旨の作成、複数の目撃証人との面接、証人尋問事項の準備etc.・・・その事件に要した時間で、後日支払われた国選弁護報酬額を割ってみたら、時給800円を切っていたことがありました。

正直、かなりしんどい事件でした・・・。物理的な大変さはともかく、被告人の一生を左右するという精神的なプレッシャーが相当大きかった割には、経済的にも身銭を切るような事件でした。

あれだけ大変な思いをしても、マクドナルドでアルバイトしていたのと同じだ・・・、と思うと、ちょっと切ない思いになったことを覚えています。

今朝のNHKの番組でも取り上げられていましたが、裁判員制度がスタートすると、集中審理や公判前準備手続により、弁護士の負担も相当程度増えます。
しかしながら、国選弁護報酬増額の具体的な見通しは立っていません。

現状の国選弁護報酬で、さらに大変になる弁護活動を適切にやろうと思っても、「思い」だけでは続かないと思われます。
逆に、現状の国選弁護報酬に見合う活動しかしないと割り切るなら、それは弁護活動の質の低下を意味します。

裁判員制度の趣旨は素晴らしいとしても、制度を支える土壌が整っているとはまだまだいえないように思います。

このところ、裁判員制度を意識してか、主人公が弁護士のドラマが複数放映されています。
この類のドラマは、大抵、華やかに事件を解決するところが強調されていますが、実際の弁護士の仕事は、そんなドラマのような格好いいものではありません。コツコツと地味な作業です。

TVドラマにしても、裁判員制度にしても、「光」の部分ばかりではなく、「影」の部分もきちんと伝えていく必要があると思います。
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債権者集会

2008.03.27

私は、東京地方裁判所から選任される破産管財人として、年に数件の破産事件を処理しています。

本日の午前中も、債権者集会に出席してきました。

「破産」というと、一昔前までは、利用する側も抵抗がありましたし、実際、手続きが完了するまで結構長期間かかっておりました。

現在では、破産事件を担当する東京地方裁判所民事20部のもとで、運用上の工夫がなされた結果、相当数の事件が迅速に処理される体制が確立しています。

基本的には、破産申立後、数日内に破産決定が出され、約3か月後に債権者集会が開催され、実質的にはそこで手続きが終了するよう運用されています。

その3か月間の間に、破産管財人は、破産者の財産を管理し、売却するものがあれば換価し、形成された破産財団を、最終的に債権者の方々に配当することになります。

破産管財人の仕事は、ケースにより広範に及びますが、一日中、債権者等の関係者からの電話が鳴りっぱなし、という時期もあります。
法的判断も必要ですが、むしろ、事務処理能力が問われる仕事のような気がします。

破産者本人が裁判所に来るのは、債権者集会の1回きりです。
その債権者集会も、特段、何も問題がなければ、ほんの5分程度で終了してしまいます。
債権者集会は、一昔前は、法廷で一件ずつ行われていたのですが、
現在は、裁判所内の広い普通の部屋に、7、8つのテーブルが置かれ、それぞれのテーブルに担当の裁判官がつき、複数の破産事件の債権者集会が同時並行で進行していきます。

「想像以上にあっけなく手続きが終了した」といった感想をもたれる方も多いようです。

このようにスピード感を持って処理されている破産手続きですが、
東京地方裁判所本庁での自己破産件数は、2万5694件(平成18年)もあるのです。

全国的には、自己破産件数は減少傾向にあるといわれていますが、東京の場合は、まだ増加傾向にあるようです。

裁判所の事件は、時代や世相を反映すると言われていますが、
まだまだ、景気回復したといえる時期ではないように思います。
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立退交渉と弁護士法

2008.03.12

先般、東証2部上場の不動産・建設会社「スルガコーポレーション」が所有したビルの立ち退き交渉が弁護士法違反であったと報道されました。

この報道を契機として、おつきあいのある不動産会社の方々から、「弁護士以外は立ち退き業務をやれないのですか?」などと質問をいただくことが続きました。

弁護士法72条は、弁護士資格を持たないものが、報酬を得る目的で、訴訟事件やその他一般の法律事件に関して代理や和解その他の法律事務を取り扱ってはいけないという原則を定めています。
弁護士資格を持たないものが、報酬を得る目的で、上記の法律事件等を代理等することは、いわゆる「非弁活動」として禁止されているわけです。

具体例を調べてみると、「賃貸人の代理人として、その賃借人らとの間で建物の賃貸借契約を合意解除し、当該賃借人らに建物から退去して明渡してもらう事務をすること」は、上記弁護士法72条に違反するとした裁判例がありました(広島高決平成4年3月6日)。

法律事務の範囲や反復継続性の解釈にもかかってきますので、一概にはいえませんが、やはり、賃貸物件の明渡しの交渉は原則として弁護士が担うべきということになります。

もっとも、破産管財人をやっていると、複数の業者から「破産物件の売却から明渡しまでなんでもやります」といった趣旨のFAXがたくさん届くのですが、中には、弁護士法違反若しくはグレーゾーンでは?と首をかしげたくなる業者さんがおられるのも現実です。

立ち退き・明渡し業務を解決する専門家へのニーズがあるにもかかわらず、弁護士が対応できていないから、といった指摘も一理あるように思います。

現在、弁護士が増加しておりますが、そのうちに「立ち退き専門弁護士」というカテゴリーもでてくるかもしれません。

当事務所は、「立ち退き専門」ではありませんが、もちろん、明渡し、退去・立ち退き等についても、取り扱っております。
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スキー場での事故(その3)

2008.02.25

春一番が吹き荒れた週末でした。
練馬は、畑が多く土の露出度が多いせいでしょうか。舞い上がった土埃で、空が茶色になっていました・・・。

さて、スキー場の事故を数例ご紹介してきましたが、今回は、スキー教室に参加した子どもが事故にあったケースをご紹介しましょう。

小学校5年生と小学校3年生の兄弟が、群馬県のスキー場のスキー教室に参加しました。
日中はスキーを滑り、夕食後の午後7時過ぎから、ナイターそり遊びをすることになりました。
参加した子ども達は、指導員に滑走場所まで引率してもらい、配布してもらったそりで滑走を始めました。ちなみに、このそりは、ブレーキやハンドル装置のない一人乗りの簡易そりでした。

兄弟は、その場所からさらに上方に上ったところから、そりに二人乗りをした状態で、滑り始めましたが、その後、悲劇が起こってしまいます。

このゲレンデは傾斜角約14度の中級コース。
事故発生当時は、夜間の外気温低下により、雪面は凍結しアイスバーンのような状態になっていました。

兄弟は、加速した状態で、なんと約234メートル滑走し、ゲレンデの最下段に設置してあった防護ネットを越え、崖下約12メートルの駐車場に転落してしまったのです。

お兄ちゃんは、残念ながら頭部打撲等により死亡、弟も全治2か月の大けがを負いました。

この事案において、兄弟のご両親は、子どもたちにそりで滑走する範囲を限定する指示やそりの操作について具体的な注意等をすることなくそり遊びを行わせた点について過失があるとして、スキー教室主催会社の責任を追及しました。

裁判所は、「・・・一般に小学生以下の児童は、突発的な行動を取りやすく、そりの滑走による危険についての認識や判断能力が十分ではないから、引率者としては、ゲレンデでそり遊びを実施するにあたっては、前年度のスキー教室におけるのと同様に、そりで滑走する範囲を傾斜の緩い範囲に限定し、これを児童に明確に指示するとともに、現場においても、右範囲を雪上に見やすい標識等を設置するなどして示し、かつ、児童らが右範囲を超えて上方に行かないよう、監視する人員を配置する等の措置を講じ、もって、そりの滑走による不測の事故の発生を未然に防止すべき注意義務があった」とした上で、本件事案においては、引率者が明確な指示を与えず、監視員を配置することもなかったとして、スキー教室主催会社の責任を認めました(東京地裁平成12年7月4日)。

判断能力が未熟な子ども達が、自分自身で、起こりうる様々な危険を予想して、回避することは期待できません。子どもの安全を確保するために、大人に対する通常の注意義務よりも高度な注意義務が求められるのは当然です。

このスキー教室主催会社でも、前年度は、危険防止のために様々な対策を講じていたようです。この事故当時も、前年度と同等の対策がとられていたら、この事故は防ぐことができたかもしれず、大変に悔やまれます。

それにしても、想像を絶するスピードで、制御不能となったそりに乗っていた兄弟の心中を察すると、胸が痛みます・・・。
このような事故が二度と起こらないよう祈るばかりです。

スキーは、幼児から高齢の方まで幅広い年齢層が楽しめるスポーツです。ルールを守りながら、無理をしないで楽しむことが大切ですね。特に、小さいお子さんについては、大人が十分に注意を払わなくてはいけないことを痛感します。

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祖母が孫の貯金を引き出す??

2008.02.21

まず、「未成年後見人」について簡単に説明しましょう。こちらは民法のお話です。

未成年後見人は、未成年者に対して親権を行う者がいない場合に選任されます。例えば、早くに両親を亡くした子どもの祖母が未成年後見人になるようなケースが考えられます。

未成年後見人は、未成年者が成人するまでの間、家庭裁判所の監督を受けながら、未成年者の財産を管理し、法律行為について未成年者を代表することになります。

次に、「親族間の犯罪に関する特例」についてご説明しましょう。こちらは刑法のお話です。

配偶者、直系血族または同居の親族の間で、窃盗や横領がなされた場合は、その刑を免除するとされています。たとえば、夫が妻のものを盗む、祖母が孫のものを横領する、といった行為は、刑が免除されることになります。
これは、親族間の一定の財産犯罪については、国家が刑罰権の行使を差し控えて、親族間の自律に委ねた方が望ましいという政策的な配慮に基づいたものです。

さて、ここで問題です。

孫の未成年後見人に選任されていた祖母が、共犯者と一緒に孫の貯金を引き出して横領してしまいました。その額約1500万円。

全くの他人同士の関係であれば、これは、まさに業務上横領罪に該当する行為ですが、この祖母は、業務上横領罪として有罪となるでしょうか。
それとも、孫と祖母という親族間の犯罪であるとい理由で、「親族間の犯罪に関する特例」が適用され、祖母は刑を免除されるのでしょうか。

この点が争われた事案について、平成20年2月18日、最高裁判所(第一小法廷)が判断を下しました。

裁判所は、「・・・未成年後見人の後見の事務は、公的性格を有するものであって、家庭裁判所から選任された未成年後見人が、業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合に、・・・刑法244条1項(注:親族間の犯罪に関する特例)を準用して刑法上の処罰を免れるものと解する余地はないというべきである。・・・」と判示しています。

妥当な結論ですね。

今回のケースは、未成年後見人の事案でしたが、今後の高齢化社会に向けて成年後見人がどんどん増えていく状況にあります。

親族であるという甘えから、ついつい感覚が鈍ってしまうリスクも否定できない後見人業務ですが、今回の判決は、後見人の責務の重さを改めて認識させたという意味でも、とても有意義であったと思います。

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スキー場での事故(その2)

2008.02.13

先日の連休、日帰りスキーを楽しんできました。

そのスキー場で、あわや大事故になる寸前の光景を目撃しました。

側面が崖になっている、幅の狭いコースで、スキーヤーがスキー場の設置した防護ネットを突き抜けて、崖の下に転落してしまったのです。幸い、大きな怪我はなかったようで、転落したスキーヤーは、救助のロープを頼りに崖をよじ登り、無事生還しました。

以前、スキーヤー同士の接触事故のお話をしましたが、今回は、上述の事故のように、スキー場の設備に関して発生する事故についてお話しましょう。このような事故の場合、スキー場経営会社の施設の設置管理の瑕疵(かし)の有無が争点となります。

長野県のスキー場で、大学生のAさんがスノーボードで滑走中、コースに沿って設置されている防護ネットを支える木製の丸太の支柱に衝突し、頭蓋骨骨折等で死亡する事故が発生しました。

Aさんの遺族は、スキー場側に支柱にマットなどの衝突緩和のための方策を講じていなかったのは、設置管理上の瑕疵があったとして、スキー場側に対して損害賠償を請求しました。

裁判所は、当該コースの難易度、支柱の位置、利用者数等に鑑み、このケースの場合、スキー場側が、支柱にマットなどの衝突緩和の措置を講じるまでの義務はないとして、スキー場側の設置管理に瑕疵はないと判断してスキー場側の責任を否定しました(長野地方裁判所平成16年7月12日)。

もう一例ご紹介しましょう。

鳥取県内のスキー場で、Bさんが、ゲレンデ内の松の木に衝突する死亡事故が発生しました。

Bさんの遺族は、松の木を伐採したり、松の木の周りに防護マットを敷設していなかったのは、スキー場に設置管理上の瑕疵があったとして、スキー場経営会社に損害賠償を請求しました。

裁判所は、松の木の位置や大きさ、その周囲の状況、ゲレンデの利用状況等に鑑みて、この松の木は、視認可能性が高い状態で、黒色で目立つ形で、他の木と同様に立っているものであること、通常のコース取りで滑走した場合には衝突しない状況であるといえること、初心者であっても松ノ木の近くを滑走する時は危険であると判断すれば衝突を回避することができること、等の理由から、スキー場経営会社の設置管理上の瑕疵があったとは認められないとして、スキー場経営会社の責任を否定しました(福岡地方裁判所行橋支部平成14年3月5日)。

スキー場側には、当然、スキーヤーたちが安全に滑走できるようにゲレンデを整備したり、危険物・障害物を撤去する等の安全措置を講じなくてはなりません。

しかしながら、スキーは、本来、自然の地形を生かしたスポーツですから、コース周辺には自ずと崖地等が存在しますし、自然の植栽も多数存在します。

スキーヤーの安全を確保するために、自然にどこまで手をいれるかは、まさにスキー場の地形やコースのラインや利用状況等によってケースバイケースで判断されることになります。

本日、ご紹介した2つの事案は、スキー場の責任が否定された例でしたが、次回は、スキー場側の責任が認められた例をご紹介することにいたしましょう。

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中小企業の事業承継 ~中小企業経営承継円滑化法案~

2008.02.06

我が国の企業数の約99%が、いわゆる中小企業だと言われています。その数約400万社以上。被雇用者数としても全企業の被雇用者数の約70%を占めているとされています。この数字を見ても、日本の経済を支えているのは中小企業だといっても過言ではないと思います。

高齢化社会の到来と言われて久しいですが、中小企業経営者の方々も例外ではなく、中小企業経営者の平均年齢は約57歳という統計からすると、今後、10~15年間のうちに、多くの中小企業が代替わりを経験することになると予想されます。この中小企業の代替わりをどうスムーズに進めていくか、という問題は、実は、日本の経済の今後の発展を左右するくらい、大変重要な問題なのです。

中小企業は、おのずと家族経営が多いので、経営者が何ら対策をとらず亡くなった場合、相続問題が絡み、「争族問題」に発展し、スムーズに代替わりができなくなることが多く見受けられます。

社屋等の資産が会社名義であればまだいいのですが、経営者個人名義であった場合は、相続の対象となります。また、いずれにしても、経営者が保有していた株式は、相続の対象となりますので、その承継を巡って紛争に発展しかねません。仮に、生前贈与や遺言によって、後継者に株式の全て承継させたつもりでも、日本の民法には「遺留分減殺請求権」(いりゅうぶんげんさいせいきゅうけん)といって、他の相続人が相続財産を取り戻すことができる制度がありますので、結局は、株式が分散する可能性も残ってしまいます。

中小企業の事業承継を巡って、今後、数多くの法的紛争が予想される状況の中、中小企業庁が「事業承継ガイドライン」を策定したり、弁護士会でも、盛んに「事業承継」をテーマとする研修が行われております。私も、できるだけ参加し、問題の重要性を痛感しているところです。

このような状況の中、2月5日の閣議決定により、「中小企業経営承継円滑化法案」が国会に提出されることになりました。

同法案によれば、民法に特例を設け、家庭裁判所の認可を得て株式を遺留分の対象から除外する等の制度が創設されるとのことです。このことにより、後継者への株式の承継がスムーズに進むことが可能となります。かなり画期的な制度だと思います。この他にも、同法案には、自社株式にかかる相続税の80%の納税猶予や金融支援措置なども盛り込まれているとのことです。

上記法案は、今期の通常国会に提出され、早ければ今年10月の施行を目指す、とされています。今まで、中小企業の先代が亡くなったことにより、後継者問題と相続問題が絡み合い、遺産分割調停や訴訟等で、5年も10年も争っているケースをいくつも見てきました。前記法案が成立することにより、中小企業の新しい担い手が、路頭に迷うことなく、また、事業としても、途切れることなく発展していくことが可能となっていくのではないかと思います。法案の成立を期待をもって見守りたいと思います。

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「店長」は管理職?

2008.01.29

昨日、東京地裁において、日本マクドナルドが、「店長」を管理職として扱い、残業代を払わないのは違法であるとした判決が出されました。

法的には、日本マクドナルドにおける「店長」が、労働基準法上の「管理監督者」に該当するかどうかが争点となったわけですが、裁判所は、日本マクドナルドの「店長」は、「管理監督者」には該当しないと判断したわけです。

労働基準法上、普通の「労働者」であれば、時間外手当や休日労働等の規定により保護され、残業代等が支払われることになりますが、「管理監督者」に該当する場合、時間外労働や休日労働といった規定が適用されないため、残業代を払う必要はないのです。

企業が「管理職」と位置づけるポストが、直ちに、労働基準法上の「管理監督者」に該当するわけではありません。
労働基準法上の「管理監督者」といえるかどうかは、労働条件の決定その他労務管理において経営側と一体の立場にある者で、名称にはとらわれず実態に即して判断すべきとされています。また、職務の内容・権限・責任、出退勤の自由度、その地位にふさわしい処遇、などから実質的に総合的に判断されることになります。

今までの裁判例の中でも、出退勤の自由がなく、部下の人事考課や機密事項にも関与していない「銀行の支店長代理」のケースや、昇進前とほとんど変わらない職務内容・給料・勤務時間の「課長」といったケースでは、「管理監督者」ではないとされています。

今回のケースでも、「店長」は、アルバイト管理の権限はあっても、本部の経営にはタッチしていないし、賃金面でも優遇されているとはいえない、といった理由から、「店長」は「管理監督者」には該当しない、と判断されたようです。

役職の肩書とは名ばかりで、実質的には、長時間労働を強いられ、賃金もさほどアップしない、といったケースはままあります。
今回の判決は、そういった傾向に歯止めをかけるきっかけの一つになっていくものと思われます。

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スキー場での事故

2008.01.12

三連休、スキーにおでかけになられる方も多いことでしょう。
私もお正月に親戚と一緒にスキーを楽しんできました。

でも、楽しいスキーも一歩間違えると、大きな事故につながりかねません。
初級に少し毛の生えた程度の私は、後方からハイスピードで追い抜いていくスキーヤーにヒヤッとしたことが何度もあります。また、後方から降りてきたスノーボーダーに衝突されひっくりかえり痛い思いをしたこともあります。
このように、上から滑り降りてきたスキーヤーが下方を滑るスキーヤーに接触し事故が発生した場合、みなさんは、どちらのスキーヤーに責任があると思われますか。

平成7年3月10日に出された最高裁判所の判例をご紹介しましょう。
北海道のスキー場で、上方から小さくウェーデル等でターンしてきた大学生A君が、下方を大きくパラレルターンで滑降をしていた20代の主婦Bさんと衝突し、Bさんが骨折や頭部打撲等の傷害を負い、約3ヶ月の入院治療を要する事故が発生しました。
このケースにおいて、最高裁判所は、『スキー場において上方から滑降する者は、前方を注視し、下方を滑降している者の動静に注意して、その者との接触ないし衝突を回避することができるように速度及び進路を選択して滑走すべき注意義務を負う』と述べています。そして、このケースでは、上方から滑降していたA君は、事故現場が急斜面ではなく下方を見通すことができたのだから、時間的な余裕をもって下方を滑降しているBさんを発見し本件事故を回避できたはずだが、回避できずにBさんに衝突してしまったA君には注意義務違反があるとして、A君の損害賠償責任を認めました。

様々なレベルや年齢のスキーヤーが混在するスキー場では、いろいろな理由で事故が発生する可能性がありますが、原則として、上方から滑走する人は、下方を滑走する人の動静に注意し、接触や衝突を回避する義務があるといえます。前記最高裁判例以降、同様の事案に関する最近の裁判例でも、同様の理屈がとられています。

後方から滑る方が、しっかり前方を注意して、追い抜く際にぶつからないようにする・・・一見、当たり前のことのようですが、みなさんも、より慎重に、くれぐれも注意をされながら、スキーをお楽しみくださいね。

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