法律よもやま話

反対尋問

2008.05.12

尋問には、おもに、主尋問と反対尋問があります。

主尋問は、事前のリハーサルを十分に行っていますから、
当然うまくいくわけです。

しかし、反対尋問が成功するのは大変に難しいものです。

反対尋問において、こちら側の意図することを積極的に言わせるのは至難の業であり、証人の言っていることが矛盾しているということを示せるだけで成功と評価されます。

せっかく証人から自己矛盾の供述を引き出したとしても、「なぜ、あなたは、さっき・・・言ったのですか?」と念押ししてはいけません。「なぜ?」と問うた途端、証人は、自己矛盾証言をもっともらしい理由で説明してしまうからです。

このように、反対尋問で「なぜ?」と問うことは禁句とされているのですが、「なぜ?」と問うて成功した例として有名な話が伝わっています。

アメリカ合衆国の第16代大統領のエイブラハム・リンカーンは、大統領になる前は弁護士をしていましたが、殺人の疑いをかけられたアームストロングの弁護を頼まれたことがありました。

アームストロングが、真夜中に被害者に向けて銃を発射したという様子を目撃したという証人に対する反対尋問でのやりとりです。

リンカーン 「あなたは、すぐ近くで目撃したのですか?」
目撃証人  「いいえ、4分3マイル離れていました。」
リンカーン 「殺人現場は、見通しの良いところですか?」
目撃証人  「ぶなの林の中です。」
リンカーン 「なぜ、真夜中に、しかも、ぶなの林の中の行動が見えたのですか?」
目撃証人  「その日は満月でしたからよく見えました。」
リンカーン (おもむろに月暦の本を取り出し、証人に示しながら)
      「殺人があった当日を見てください。この日は、『新月』となっていますね。」
目撃証人  「・・・はい。」

このように、証人に嘘を重ねさせ、さらに最後の最後に、「なぜ?」とダメ押しをさせ、その上で、突き崩す・・・さすが、リンカーンはお見事です。

このように、最後に確信があれば、証人を追い詰めて矛盾を明らかにし、その証人の信用性を一挙に崩すというのは、まさに反対尋問の醍醐味なのです。
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   『相澤法律事務所』 弁護士 相澤愛
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