法律よもやま話

中小企業の事業承継 ~中小企業経営承継円滑化法案~

2008.02.06

我が国の企業数の約99%が、いわゆる中小企業だと言われています。その数約400万社以上。被雇用者数としても全企業の被雇用者数の約70%を占めているとされています。この数字を見ても、日本の経済を支えているのは中小企業だといっても過言ではないと思います。

高齢化社会の到来と言われて久しいですが、中小企業経営者の方々も例外ではなく、中小企業経営者の平均年齢は約57歳という統計からすると、今後、10~15年間のうちに、多くの中小企業が代替わりを経験することになると予想されます。この中小企業の代替わりをどうスムーズに進めていくか、という問題は、実は、日本の経済の今後の発展を左右するくらい、大変重要な問題なのです。

中小企業は、おのずと家族経営が多いので、経営者が何ら対策をとらず亡くなった場合、相続問題が絡み、「争族問題」に発展し、スムーズに代替わりができなくなることが多く見受けられます。

社屋等の資産が会社名義であればまだいいのですが、経営者個人名義であった場合は、相続の対象となります。また、いずれにしても、経営者が保有していた株式は、相続の対象となりますので、その承継を巡って紛争に発展しかねません。仮に、生前贈与や遺言によって、後継者に株式の全て承継させたつもりでも、日本の民法には「遺留分減殺請求権」(いりゅうぶんげんさいせいきゅうけん)といって、他の相続人が相続財産を取り戻すことができる制度がありますので、結局は、株式が分散する可能性も残ってしまいます。

中小企業の事業承継を巡って、今後、数多くの法的紛争が予想される状況の中、中小企業庁が「事業承継ガイドライン」を策定したり、弁護士会でも、盛んに「事業承継」をテーマとする研修が行われております。私も、できるだけ参加し、問題の重要性を痛感しているところです。

このような状況の中、2月5日の閣議決定により、「中小企業経営承継円滑化法案」が国会に提出されることになりました。

同法案によれば、民法に特例を設け、家庭裁判所の認可を得て株式を遺留分の対象から除外する等の制度が創設されるとのことです。このことにより、後継者への株式の承継がスムーズに進むことが可能となります。かなり画期的な制度だと思います。この他にも、同法案には、自社株式にかかる相続税の80%の納税猶予や金融支援措置なども盛り込まれているとのことです。

上記法案は、今期の通常国会に提出され、早ければ今年10月の施行を目指す、とされています。今まで、中小企業の先代が亡くなったことにより、後継者問題と相続問題が絡み合い、遺産分割調停や訴訟等で、5年も10年も争っているケースをいくつも見てきました。前記法案が成立することにより、中小企業の新しい担い手が、路頭に迷うことなく、また、事業としても、途切れることなく発展していくことが可能となっていくのではないかと思います。法案の成立を期待をもって見守りたいと思います。

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